2008年10月26日

この坂を越えたなら


またまた山の話で恐縮だが、
10月21日午前3時半、夜陰に紛れて高山を出発し、長野県の小谷(おたり)温泉にある雨飾山を目指した。
標高は、1,963メートルであるが、
一気に高度を稼ぐ垂直に近いようなその山道に、引き返す人も多いという。


前回の焼岳など赤子のようなもので、
今回は比較にならないほどハードな山だ、という登山家諸氏の口ぶりもあり、
私は暗に、「あなたは止めておいたほうがいい」と釘を刺されているような気がして、
「やっぱり止めておこうかなあ」と、深刻に考えたのであった。

地獄のように辛い山だという先入観を植え付けられて、それを想像し、その地獄に浸り切る覚悟を決めて、
「参加」と決めたのは、その前々日であった。


■毎年、この季節に届くネパールのフェルトの小物たち。バッグ・ストール・ミトン、そしてこの室内履き。
 小椅子に乗せて
 

この坂を越えたなら




案の定、挑戦をあきらめて引き返す人にも出会い、
私はアラスゲ沢と呼ぶ沢の辺りで、その山頂を見上げ、地獄に突入する意志の有無を確認したのであった。

まだ、確かな登山ルートのなかった頃、
三度目の挑戦で、山頂を極めた深田久弥は、「日本百名山」の中で、
「幾度か登り損ねたあげく、ようやくその山頂を得た方がはるかに味わい深い」と語り、
その山頂を、「久(きゅう)恋(れん)の頂(いただき)」という言葉で表現している。


私は、「この坂を越えたなら、幸せが待っている」などと、演歌の一節を唸り、
地獄のような山道を乗り切ったのである。
そして、覚悟と気力こそ、王道だと悟ったのである。
 







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Posted by 宣 at 11:43│Comments(0)
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