2008年10月09日

トムのホットワイン


10月7日の火曜日、焼岳に登った。
三斗倶楽部に所属する、男女あわせて7人での山行であった。

朝方、少し雨がちらついたようであったが、
その後はその気配もなく、緩やかな風の吹く過ごしやすい一日であった。
曇り空のようであるが、周りの山々は全てよく見え、日焼けするかもしれないというような危惧もなく、
絶好の登山日和であった。


ナナカマドの紅葉も、今がピークかと思われるほどで、緑の笹原に美しく映えていた。
赤と緑のコントラストの妙に酔いながら、「綺麗」だとか「美しい」とか、だれかれとなく、幾度、口にしたことだろう。

「無理をしない」 がモットーの山登りの会であるから、
上りも下りも何箇所かで小休止をしながら歩くのであるが、
その都度、軽い飲み物を飲んだり、果物や菓子などを食べたりする。


上りの休憩で、最初にさしだされるのがホットワインである。



■角・丸・三角と様々な形のこの木片は長年の使用のせいか、柔らかく磨かれて手に握ると暖かい。
 これはパキスタンの生活道具・・・実は<羊の名札>である。 

トムのホットワイン






このホットワンは、スイス人のトムのお手製であるが、
作り方をなんど聞いても、だれが作っても、なかなか、トムのような味にはならないのである。
これは、トムにしか作れないホットワインなのである。

 「みんな、僕のことより、ホットワインを待っているみたい」

いつだったかトムがそんなふうに嘆いていたことがあったが、
この会の山登りに欠かせないのが、トムのホットワインなのである。

十年も前から、山登りには、学校を休ませて参加させていたトムの子供たちも随分、大きくなった。
長男は身長180センチを越え、次男もすでにトムの背丈を越したという。
愛らしかった末っ子の長女も、中学一年になり、24・5センチの靴を履くという。
トムの髪にも、白いものが目立ちはじめた。

 しかしあの頃と少しも変わらないのは、トムのホットワインである。

轟々と音をたてて立ち上がる焼岳の噴煙は、
深田久弥の言葉を借りれば、「次に打つ手を考えている」ような様相である。
美しいナナカマドの紅葉に陶酔し、噴煙の恐ろしさにひれ伏し、
トムのホットワインの味に和んだ、不思議な焼岳の一日であった。      





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Posted by 宣 at 17:34│Comments(0)
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