2008年08月25日

 言葉への意欲

貝を加工した箸置きが二つ、
水牛の角から作ったレンゲが二つ、切子のぐい呑みが一つ。

その人は、そんな買い物をされながら、
「此の頃、物欲が無くなったわ。若い頃は、なんでも欲しかったのに。物欲だけでなく、いろんな欲が薄れてしまったわ。
                           欲があるというのは若いという証拠ね。」

「そうですね、私も随分、欲が無くなりました。」
「貴女はまだお若いから、そんなことないでしょう。」
「いいえ、もう、駄目です、本当に。」


年に、二、三回ほど、来店してくださるそのお客様との会話は、そんな切り口から始まった。

「でも、不思議なことに、言葉への意欲だけは衰えないのよ。あなたもそうじゃない?。」


■寺院で鳥を放ち、功徳を得る、そのためのもの、と聞いてもう何度か買い付けている鳥篭。
 そして、楽しさ溢れるこのカゴを心弾ませて買っていく客・・・どちらも素敵で魅力的。心が温まる。

 言葉への意欲







今までの短歌結社の他に、新しい結社に入会されたというその人は、
「これは業なのよ。もう、死ぬまで離れられない業なのよ。」と、コロコロとお笑いになった。


新たに入会したのは、佐々木幸綱の「心の花」だという。
今までの結社に対する遠慮や恩義のようなものもあり、それはそれとして続け、
新しい結社の中では、別の自分を掘り起こしたいのだという。

そのことを、その人は、「言葉への意欲」という言葉で表現されたのであった。

それは、物欲でも色欲でもない別の欲望である。表現欲とでもいうのだろうか。
死の寸前まで、衰えそうにない欲望である。
それがあるから、元気に生きられる。それがあるから、たやすくは呆けられない。それがあるから沢山の本を読む。健康にも気を使う。


そのお客様に指摘されて、私にも同じような欲があることに気が付いた。
また、そのことのために、日々、苦しんでいることにも気が付いた。
けれどもそれは、決して止められないものであることにも・・・・・。













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Posted by 宣 at 16:20│Comments(0)
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